商標登録をせずに、商標を使用することができるか?(商標出願を行うべきか?)

商標出願にはお金がかかるので、できることなら商標登録せずに、商標を使用したいのですが・・・という質問をよく受けます。

 

この質問について、一番留意しなければならないのは、商標権の「先使用権」を獲得するには「周知性」が要件とされているという点です(商標法321項)。すなわち、(他人の商標登録より)先に当該商標を使用している場合には、商標権者の妨害を受けることなく使用することができる場合があるのですが(先使用権)、これは限定的な場合(当該商標に周知性がある場合)にしか認められていません。必ずしも先に使用しているからといって、大丈夫とは言えません。


そこで、法的には、商標登録を受けておいた方が、自己の権利を明確に確立しておくという点で、非常に有効であると言えるわけです。

 

ただし、商標登録を受けていなくても、第三者が当該商標を出願・登録しない限り、適法に、何の問題もなく、当該商標を使用できるわけです(また、一定の場合には、著作権法や不正競争防止法による保護も受けることができます)。そこで、中小企業の中には、商標出願にもコストがかかることから、いちいち自社の製品名やサービス名などを出願しないという場合があるようです。

 

しかし、実務上は、商標登録を受けることなく販売された製品やサービスが幸いにも当たった場合に、問題が顕在化することになります。すなわち、会社を挙げて投資し開発した商品がせっかくヒットしたにもかかわらず、第三者に商標権を取られた結果、商標権者から商標の買い取りやライセンス料の支払いを要求されたり、又は、販売差し止めや損害賠償を要求されたり、といったことがよくみられるところです(このようなビジネスを堂々と行っている業者が実際に存在します)。

 

また、商標登録をしていないために模倣品が大量に流入した結果、当該商品の信用や価値が毀損されるといった事案も実際に多く見られるところです。

 

このように、商品販売当初に、わずかな投資(商標出願にかかる諸々の費用)を出し渋ったがために、法的な紛争(自己のビジネスが毀損されるといった事態)に巻き込まれることになるわけです。従って、法的なリスクを可能な限り回避するためには、事前に商標権を取得しておくことをお勧めします

 

なお、(セカンドベストとして)商標出願をした方が良いか否かを判断するポイントとしては、以下のとおりです。

 

当該商品の種類(アパレルや雑貨、靴などの商品の場合には、商品価格の大半はブランドの費用とも言えるので、偽造品などが出やすい商品とも言えます。逆に商品の部品などの場合には、商標がついてない場合もありますが、仮に商標が付いていても、商品の販売に対して影響が少ないという場合もあります。)

 

商品展開の規模(商圏が狭い場合には、逆に当該商圏での周知性が獲得しやすいとも言えます。)

 

商品の販売態様として、当該商品の商品名の他に、登録商標であるコーポレートロゴなどが付けられている場合には、コーポレートロゴを付すことによって商標権の保護がなされているので、個々の商品名について商標登録をしないという場合もあります。

 

役務商標(サービスマーク)の場合、提供する商品について商標登録を得ている場合には、重ねて役務について商標を取らないという場合もあります。

 

著作権や特許権などで保護されている場合。たとえば、ゆるキャラなどの場合にはそのデザインに著作権が発生していれば、あえて図形商標を取っておく必要性はないかもしれません。しかし、法律の専門家としては、著作権などの曖昧な権利に依存するよりは商標を取っておいた方がよいし、著作権の場合にはデザイナーなどに著作者人格権が発生するので、それとの関係でも商標権を取得しておくことををお奨めします。


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