自社製品の偽造品・模倣品・海賊版又は偽物と疑われる疑義品を発見した場合には、以下の対応が必要となります。
まずは、下記の①②③の措置を順次行います。末端の店舗に対して③の措置を行ったら、その仕入先に対しても③の措置を行い、流通ルートの上流に遡っていき、輸入元又は製造元の川上まで③の措置を行います。③の措置で解決がつかない場合には、④⑤⑥の措置の全部又はその一部を並行して行うことになります。
1.現物の入手
偽造品・模倣品と疑われる疑義品を発見した場合には、何はともあれ、現物を入手することが大切です。現物がなければ、知的財産権の侵害の有無を確認することもできませんし、その後の偽造品対策を行ううえで必須となる証拠の確保が困難となります。
また、現物の購入の際には、レシートや領収書などを大切に保管しておくことも大切です。これらのレシートには、購入した製品名や製品番号、購入日、購入金額、購入した販売店名などの記載があるため、裁判となった場合に証拠として利用することができます。
特に最近では、ネットオークションやネットショップで偽造品・模倣品が販売されることが多いため、現物を実際に見てみないと権利侵害の有無を判断することができません。また、実店舗の販売とは異なり、販売者の情報を入手することが極めて困難であるため、実際に購入手続を行うことにより、E-mailなどの通信記録、振込口座、配送伝票などの資料から販売者の特定をしていくことになります。
2.鑑定、及び法律構成の検討
疑義品の現物を入手したら、すぐに、真正品か否かの鑑定を行うこととなります。
真正品(適法な並行輸入品)であるにもかかわらず、たいした調査もせずに、偽造品であるとして権利侵害の警告を行ったり、その取引先に偽造品であるなどと流布した場合には、民法上の不法行為や不正競争防止法の営業誹謗行為に該当する場合があるので、十分留意する必要があります。
できれば、真正品との識別ポイントは、少なくとも3点以上あることが望ましいと言えます。
偽造品であることが確認できたら、次に、法的構成の検討を行います。
例えば、貴社が商標権を保有している場合には、疑義品に付された標章が貴社の登録商標と「同一又は類似」であれば、商標権侵害として警告することができます。
仮に、貴社が商標権を保有していない場合においても、貴社の商品表示が不正競争防止法上の「周知表示」「著名表示」に該当すれば、不正競争防止法の周知表示混同惹起行為(法2条1項1号)又は著名表示冒用行為(法2条1項2号)として警告することが可能となります。
また、貴社の商品形態を模倣したデッドコピーが販売されていた場合には、不正競争防止法の商品形態模倣行為(法2条1項3号)として警告することができます。
以上のとおり、商標権などの権利を確保していない場合であっても、不正競争防止法上の権利侵害を主張できる場合がありますので、早めに知的財産分野に詳しい弁護士に、法的構成の検討を依頼することが望ましいといえます。
3.警告書の発送、裁判外の交渉
実務上多くの場合には、まず、偽造品の販売業者に対して警告書(内容証明郵便)を発送し、商標権侵害又は不正競争防止法違反の警告を行い、販売中止や仕入れ先の情報開示、損害賠償などを求めます。
通常は、裁判などの手続によらずに、裁判外の交渉で、①販売の中止、②仕入れ先などの情報開示、③和解金の支払い、などを求めることとなります。特に、仕入れ先の情報開示については、偽造品の流通ルートを解明し、偽造品の出所を突きとめるための第一歩であることから、重要な和解条件の一つであるといえます。
その後は、開示された仕入れ先にも同様に警告を行い、流通ルートの上流に遡って、同様の警告を行っていくこととなります。この段階で重要な点は、偽造品対策の目的は和解金を支払わせることではなく、最終的に偽造品の製造業者を叩く(製造業者に当該ブランドの生産から撤退させる)ことが目的であることに留意する必要があります。
4. 裁判所の民事手続
裁判外の交渉をしても和解ができない相手には、最終的には裁判を提起するほかありません。通常は、偽造品・模倣品の販売差し止め、及び損害賠償を求めることとなります。
5. 刑事告訴
偽造品・模倣品の販売業者のうち、悪質な場合(例えば、警告をしたにもかかわらず、再度偽造品・模倣品の販売を行う、取扱数量など多量で規模が大きい場合など)には、上記の民事手続に先行する形で、刑事告訴を行います。商標権侵害や不正競争防止法違反については刑事罰の対象とされているため、偽造品・模倣品の販売業者にとってはかなりの脅威であり、偽造品対策としてはかなり有効な対策となります。
但し、これらの知的財産権侵害の犯罪については特殊な犯罪類型に該当するため、一般の警察署ではなかなか対応してもらえない場合もあります。刑事告訴を行う場合には、予め必要な証拠を収集のうえ警察に提供しておくなど、事前に警察とある程度コミュニケーションを図っておく必要があります。
6. 税関への輸入差し止めの申立て
偽造品や模倣品などの知的財産侵害物品は、関税法第69条の2及び第69条の11により、「輸出及び輸入してはならない貨物」と定められており、日本全国の港湾施設や空港において、税関がその取締りを行っています。
この税関に対し、権利者が自己の権利を侵害する知的財産侵害物品が輸入されようとした場合に、当該貨物の輸入を差し止め、認定手続を執るべきことを申し立てる制度(輸入差止め申立て)があります。すなわち、これは、税関に対し、偽造品の流入を差し止めてもらうための制度であり、輸入貨物の検査を行う税関に目を光らせてもらう手続といえ、偽造品対策としてはかなり有効な手続です。
偽造品・模倣品の多くは中国など国外から流入するので、水際でこの流入を防ぐことができれば、かなり効果的であるといえます。特に、特段のコストをかけずに、輸入貨物の検査をしてもらえることから、偽造品対策を行っている企業としては、是非とも利用したい手続といえます。
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